◆1日目
挑戦をはじめようと決心したけれど、どこで使っていいか本当にわからない。
まさか職場(雑貨屋)で赤ちゃん言葉で接客したら間違いなくクビか説教されるので、まずは後ぐされのない相手に的を絞ることに。
会社のお昼やすみ、少し歩いてふだんは行かないコンビニへ。
おにぎりとコールスローを手にとり、おじさんのいるレジへ並ぼうとしたけれど、それでは極限に挑戦ではない!!と自分を奮い立たせ、若い男の子の待つレジへ。
「いらっしゃいませ」と笑顔がなかなか素敵な店員さんに「ちゅいまちぇん、おにぎり温めてくだちゃい」と赤ちゃん言葉でおにぎりを差し出すと「こちらツナマヨネーズですけどよろしいですか?」と聞き返されてしまい、恥ずかしさ倍増。鶏五目を買ったつもりだったのに…!
「あり、まちがえちゃいまちた、ごめんちゃいな」
挑戦を続けた自分はほめたいと思うけれど、赤ちゃん言葉というかアニメのキャラクターみたくなってしまった。
店員は苦笑いで無視。当然だ。私が店員でもそうする。
300円をレジに置き「おちゅりは結構ですぞ」と、もはや何がなんだかわからない捨てぜりふを超小声で吐いて、店を飛び出しました。「ですぞ」はいくらなんでもない。二度とあのファミマには行けなくなった。
◆2日目
やっぱり知らない相手よりも、知り合いのほうが挑戦しやすいかも、と昨日の一件で思い知らされた。
なので、出社してすぐに「おはよぉごじゃいまちゅ」と男性の先輩に向かって赤ちゃん言葉を投げかけると「なーに甘えてんだよコラ〜」とまんざらでもない(すいません自意識過剰で)感じで頬をつねられた。
その瞬間、先輩の生温い指先についゾワッとして「何するんですか やめてくださいっ!」と
思いきり手を払ってしまい、まるでコミュニケーション障害。
いけない、と思い直し「ちゅみましぇん〜」とふたたび赤ちゃん言葉で身をくねらせると先輩は困惑顔でした。ごめんなさい。
その後も女の先輩に「××しゃ〜ん、レジ打ち変わってもらってもいいでちゅか」と自分勝手なお願い事を赤ちゃん言葉でしてみると「なんでちゅかぁー、昨日からどちたのかにゃー」と、さすが1児の母という対応をされ、何だか安らかな気持ちに…。
調子に乗って「なんか接客とかめんどくちゃいもん!日々にちゅかれちゃったのでありましゅ〜」と、自分でも耳をおおいたくなるような赤ちゃん言葉を連発していたら、だんだん先輩の顔色が曇ってきて「職場なんだから、甘えるのもほどほどにしないとね」と最後についっと無視されてしまった…。
「ちゅみましぇん…」
ここは挑戦と腹をきめ赤ちゃん言葉で謝ったら「いい加減にしなさいね」と真顔で怒られてしまった…。
男性の先輩にまで「ほんとお前、朝からおかしいぞ」と言われ、とても気分の悪い一日でした。
◆3日目
久々に遊ぶ予定の友人に「7時に横浜駅でオッケェでちゅか (^0^)BABBABOO」とメールを入れたところ「ごめん! 仕事で今日無理っぽい」と速効で返事が。
「BABBABOO」に対してはノーコメント…
さびしい気持ちで「てんや」で野菜天丼を買って帰宅…。
わびしい夕食を食べていると「ねえ さっきのメールおかしかったけど何かあったの?」と
今さら友人からメールが。
「ちょっとさびしかったんだモ〜ン! あーしゃんはひとりで天丼食べてまちたよ」とレンコンの天ぷらを食べながら返したところ「ねえあんた大丈夫? どうした?」と電話がかかってくる始末…
冗談のわからない女友達を相手に挑戦するのはやめようと思いました。
◆4日目
いやな予感はしてたんですが、2日目の挑戦で甘え口調で挨拶した男の先輩から熱視線を送られている様子…。正直もてるタイプではない彼。きっとこの2日でいろいろ勘違いしたのでしょう…。
「そんなに見つめないでくだちゃい…」とめげずに赤ちゃん言葉で訴えると「おいおい、なんだよ、おめぇ自意識過剰じゃねーの」と顔を真っ赤にしている。
その瞬間、ふたたびゾワー!と来て「つーかさあ、何顔真っ赤にしちゃってるわけ? ここ職場なんだよねぇ。勘違いしないでよね、そこんとこマジで」と昔憧れていたヤンキーの先輩(つむぎたく世代です)を真似たら、時代が古くなってしまった。
「なんだよー、キツいこと言うなよー」と涙声の先輩に「ガタガタうるちぇーんよ!」と赤ちゃんミックスで小さく脅すと走り去ってしまった。
挑戦の目的から大きく大きくはずれていることに、どうしていつも文章にするまで気付かないのか今とても後悔しています。ていうか、甘えの象徴である赤ちゃん言葉って、恋人間でしか許されないコミュニケーション手段なんだ!と今気づきました。
追記★友人に聞かれたショックで、あの後しばらく「ご主人さまのお帰りですぞー」を言ってくれなくなった彼ですが、最近は傷も癒えたらしく「わしのかわいこちゃんはどこですかー!」と言って玄関をばーんと開けるようになりました。もし誰かに聞かれたら、と想像しただけで身悶え。 |